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 このページでは、私が今まで読んできた書物(殆ど推理小説で、しかもかなりの偏読ですが)から、お気に入りのものを取り出して紹介しようというページです。本を読む人も読まない人も、私なりの名作を、他人との討論を交えながら選んだものなので、一読の価値があると思います。どうか、このページが皆様の役に立ちますように祈りつつ。

綾辻行人氏
「時計館の殺人」
(講談社文庫)
 推理小説です。有名な「館」シリーズの最高峰とも言えるべき作品です。これ程大掛かりなトリックは前代未聞とも言えるでしょう。全てが明かされる最終章ではまさに凄まじいほどの戦慄を覚えました。
泡坂妻夫氏 
「乱れからくり」
(創元推理文庫)
 推理小説です。題名の通り、「からくり」と「玩具」を軸にして、ストーリーが展開していきます。犯罪の計画が緻密で、推理小説、というより、まるで犯罪絵巻のよう。筆者自身も言及していますが、旧体然とした文章が、ストーリーに彩りを添えています。
京極夏彦氏 
「鉄鼠の檻」
(講談社文庫)
 推理小説です(小説という人もいます)。古刹と妖怪にまつわる話に詳しい主人公が、困難な事件を解き明かします。シリーズ中で、最も粗があるという評判を聞いたことがありますが、それを上回るスケールとストーリー展開が見ものだと私は思っています。
久美沙織氏
「ドラゴンクエストW」
(エニックス文庫)
 ファンタジー小説です。言わずと知れたテレビゲーム「ドラゴンクエストW」を文庫化した四巻に跨る長編です。詩を詠うような陶酔的な文章は、元がゲームであることを感じさせない程素晴らしいです。
高田崇史氏 
「六歌仙の暗号」
(講談社ノベルス)
 推理小説です。殺人事件と平行して、歴史に埋もれた事実を、論理的に解明していく趣向です。高田氏の「QEDシリーズ」の中でも、事件と、この六歌仙の事実との絡み合いが特に巧妙で、傑作だと思います。高田氏のこの「QEDシリーズ」、歴史の論文でも十分通用するのではないか、と思ってしまいますね。
ダニエル・キイス氏 
「アルジャーノンに花束を」
(早川書房)
 小説です。和訳は、私の所持している文庫では、小尾芙佐氏がなさっています。知的障害をもつ青年が中心となった物語です。もう、私は、最後の方では涙が止まりませんでした。様々な問題を取り入れたと思われるこの作品、是非皆様も手にとってみてください。
土屋賢二氏 
「われ笑う、ゆえにわれあり」
(文春文庫)
 エッセイ集です。お茶の水女子大学の哲学の先生が生み出した、爆笑の哲学エッセイ集。日常のどんなものも哲学に、そして笑いに変えて書いてあり、そしてまたそれは、どこに笑いが潜んでいるか、じっくり読まなければ判りません。電車の中で読んで笑って、顰蹙を買わないようにしましょう。
西村京太郎氏 
「十津川警部、沈黙の壁に挑む」
(光文社文庫)
 推理小説です。聾唖者にスポットを当てた作品ですが、実はもう一つのテーマが隠されています。カッパノベルスで表紙に書いてあった文、「ワタシニデキルコトヲ、オシエテクダサイ」は、最後まで読み終えた時に、感動を伴って胸に迫ってきます。
西村京太郎氏 
「超特急つばめ号殺人事件」
(光文社文庫)(講談社文庫)
 推理小説です。現在のつばめ号での事件と、過去の燕号での出来事を平行して進めていく、小説内小説の技法で物語りは進みます。このストーリー展開、とても素晴らしく、どんどん引き込まれていきます。戦時中の日本の状態を見事に描写しつつ、事件と結び付けている、エンタテイメントの傑作だと思います。
森博嗣氏 
「幻惑の死と使途」
(講談社文庫)
 推理小説です。愛知の大学の工学部助教授(だったと思う)が著者。主人公も、大学の先生と、生徒です。シリーズ中でも、ラストシーンで、主人公の感情が、最も表立って描かれている作品だと思います。その意味で、シリーズ中でも、最もとっつき易い作品かも知れません。
山口雅也氏 
「生ける屍の死」
(創元推理文庫)
 推理小説です。「死人が生き返る」という設定のもと描かれる事件の謎を追います。「死」を「生化」しているが故に、私は、ラストシーンで、他のどんな作品よりも死の重さを感じることができました。
山田正紀氏 
「女囮捜査官」シリーズ
(幻冬舎文庫)
 推理小説です。5冊組で、それぞれ副題が「触覚」、「視覚」、「聴覚」、「嗅覚」、「味覚」となっています。特に後の二冊が素晴らしく、全て読み終えた時には、想像もつかない展開に、とてつもなく感動する思いでした。殆どが無差別殺人となっていますが、伏線が見事で、犯人に迫っていきます。
山田正紀氏 
「神曲法廷」
(講談社文庫)
 推理小説です。司法の歪みに焦点をあてた、濃いストーリーです。「真の探偵は神である」というコンセプトは、最後の最後で、空前の幕締めを見せてくれます。
山田正紀氏 
「ミステリ・オペラ」
(早川書房)
 推理小説です。原稿用紙二千枚、南京大虐殺をテーマに据えた大作です。畳み掛けるようなラスト、そして余韻の残る物語の幕切れは印象的です。

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